台湾で隠居

「いま、台湾で隠居してます ゆるゆるマイノリティライフ」(大原扁理著)を読んだ。

著者は低収入低消費をモットーにしており、ゆえに「隠居」なのだが、そこに共感して他の本も数冊読んできた。

今回もこれまでと別に内容は変わらず、単に台湾に舞台を移しただけで、稼がず使

わない、人にもそれほど会わない生活が繰り広げられる。この本の骨子を説明してください、と言われると何書いてあったかあまり思い出せない。なので、思い出せる範囲で印象に残った部分を以下にリマインドしておく。

・台湾は観光名目で入国して3か月住める。3か月経つ前に出国して、また3か月…を繰り返せばずっと住めるらしい。日台間の関係が友好なおかげ?

・切り詰めて月5万円で生活できる(ただしコロナ前)。

・台湾ではベジタリアン/ビーガン食が普及している(素食という)。台湾人の約1がベジタリアン/ビーガン。

・暑い。6~9月は地獄の季節である(私もGWに行ったことあるのだが、その時でもべらぼうに暑かった。さもありなん。)。冬はマイルド。

・暑さゆえか人々は時間にルーズである。約束も良く忘れる。

・人と人との垣根は日本より低く、杓子定規にルールを盾にとって他人を苛む人もあまりいない。

・公共インフラが充実している。スマホ充電スポット、公共Wi-Fi、飲料水など。あと町中に坐れる場所も多い。同時に人間的インフラも充実。

・1949年の二ニ八事件(1万8千~2万8千人の犠牲者を出した)以降、戒厳令のもと長く白色テロの時代が続き、民主化されたのはやっと80年代。民主主義の歴史はまだ短い。

・歴史的に何度も宗主が変わってきたこともあり、変化に対して柔軟である。コロナへの対応で成功したのもそのおかげかも。

・人の自己肯定感が日本よりも強い。

著者の総合的な感想としては、「日本に住んでいたときよりもよっぽどラクに生かしてもらっている」とのこと。

そうなんだ~。何が違うんだろう。私が以前台湾に行ったのは、2014年のことで、

友人と5人組で行ったので、土地に関する記憶は曖昧である(私の場合、人と出かけるとその人に意識が集中してしまうので、あまり旅先の土地自体とお近づきになれないのである。個人旅行向き。)。暑かった、日差しが強かった、バスとタクシーの運転がべらぼうに乱暴であった、タクシーの運ちゃんが信号待ちに読書をしていた、故宮博物館がすごく良かった(が同行者らはさほどでもないようだった)、士林夜市で食うものは不味かった、火鍋は辛過ぎた、飲茶は旨かった、1人で占領したホテルのツインルームが大変快適だった、九扮は身動きが取れないほどの人の多さだった。しかし何より仲間たちとワイワイやって楽しかった。

そんな仲間たちとも最近疎遠になってしまっている。あれからもう9年経つのか。まだ若かった。まだ取返しがつき、やり直しがきく年齢だった、がそのことに気づいていなかった。おっとテーマが逸れてきた。

私の感想は、台湾で隠居、いいじゃない、ということだった。私もフリーランスなので、台湾に渡ることもいくらでも考えられたのだなあ。今もう無理だけど。失ってから気づく、かつて手にしていた自由。そんなちょっと悲しい余韻を胸に感じつつ、ご本を閉じたのでした。面白かったです。