友あり遠方より3時間半

友あり遠方より電話来る、あまり喜ばしくない。

いや、嬉しいんだけど、その通話が3時間半に及んだりするとかなり喜ばしくない。

通話と言いつつ、発話量はあちらが9割下手すると9.5割、こちらが1割か0.5割てなもので、それはもはやかの人の独白の域に入りつつあった。

その内容は、当然ながら愚痴というべきものであって、かの人は相変わらず苦労しているのであった。彼女というのは常に誰かと揉めているのだが、しかも多くの場合、多勢に無勢の形で揉めているのだが、なぜそうなるのかは謎である。付き合いは長いが、彼女はトラブルメーカーではなく、人の心が読めないというわけでもなく(まあこちらの風呂の予定も気にせず3時間半喋り続けはするけど)、嘘つきでもない。つまり、彼女が私に語ることは、多少客観性を欠いてはいようとも、作り話ではない。しかし、彼女がどうしてそこまでロクでもない人間ばかりと係りあいになるのか、運が悪いのか、人の欠点を感じ取る彼女の感性が鋭すぎるのか、その両方かもしれない。

彼女と話していると、世の中は誠にロクでもない人間ばかりで、じゃあ彼らがそのために社会の片隅に追いやられているかというと、全然そんなことはなく、むしろうまいこと金を抱えて良い地位に納まっていたりする。そして、その正体を知っていてか知らずにか、周りの人間が奴を放擲しようとすることはない。世の中の権威あるポジションというのは、かえってそんな奴ばかりで占められているのではないかという気がしてくる。

で、人間というのは、思った以上にロクでもない。生まれてこのかた、教育・躾・倫理・道徳・宗教などの装置によって、何となく人型に成形されているけれど、中にはそもそも成形し難い者もいて、気を許していると、種々の隙を縫って、いつの間にかイレギュラーにあっちが膨らみこっちが凹みなどしてどんどん人型を離れていく。さらにそれを見た周りの成形人たちが、あいつが許されるならおいらも、てな感じであっちが膨らみこっちが凹みしていく。そしてはたと気づいて遠くから眺めてみると、彼らはもうすでに人型を留めていなかったりするのである。で、世のものは多くれ少なかれ皆んなそうなのである。

てなことを思った。もちろん私も例外ではないが、地位と金とを持たぬだけ、害悪は少ないと信じている。害悪が少ないというところに自身の価値を見出している。ううむ。

今後、人型を忘れる人はさらに増えてくるのではないかと予想する。貧しくなると余裕がなくなるから。衣食が足りなくなると礼節も忘れる。戦争なんかになったら目も当てられない。そんな人間の真相なんか見たくないが、そう思う一方で、とことん人間というものを見下げ果てたい気持ちもある。人間の可能性に期待するのって、それを見出すための努力が要るわけだし、そんな期待は尽きた方が、何の努力もいらなくて楽だ。人間なんてとことんゲスであれば良い(が、もちろんこちらの迷惑にならない範囲でだ。大概そうは行かないから面倒だ)。

・・・てなことを思った。こうしてよは更けていくのであった。流石にお休み。