徹夜明け

全体として今年の冬は暖かいと言わざるを得ない。

午後5時の時点で私の里は氷点下になっていないし、昼間などわんわんの部屋は室温15℃にも達していた。地球の異変かはともかく、間違いなく楽ではある。暖房費高騰のおり、去年より灯油の消費量は少ない。

今日は満月であった。わんわんを連れて満月の中前人未踏の雪原(正確には雪に埋まったただの車道だが)を歩いた。私の足は余裕でズボズボ埋まるが、わんわんは軽快なので割と埋まらないで雪の上を歩ける。が、4歩に1歩くらいの割合で埋まるので、歩き方がへこへこしていてかわゆい。そんなわんわんの様子を見つつ、この姿を激写して「その者青き衣をまといてかんじきの野に降り立つ」とか書いてマイファザーにラインしてやろうかと思ったが、あいにくスマホがないし、わんわんは裸だったので叶わなかった。

そしてそもそも私は「かんじき」とは雪が固くなって埋もれずに歩ける状態のことだと思っていたのだが、ネットで漢字調べてたら、そうではなくて、埋もれずに歩ける道具のことだと初めて知っていろいろと断念した。

雪の原で狐を2匹みた。うちのわんわんが吠えかけると悠然と姿を消した。冬の狐は立派である。体もふさふさだが、やはり尻尾が素晴らしくて、4本脚で歩くときは、尻尾は後ろに水平にぴんと伸びているので、とても横長い生き物に見える。夏になると毛はパサついてしぼみ、こんな小さかったっけとなるのだが。

さて、今日も今日とて忙しい。3本の仕事が来ていたところ、納期の遅いものから先にやってしまうという凡ミスにより直近の納期が間に合わなくなり、木曜の夜から金曜の朝にかけて、久々に徹夜したのであるが、徹夜はまるで良いことがない。すなわち、

・冬は寒い。夏ならむしろ涼しくなって良いが、冬は底冷えするばかりである。

・集中力があかんようになる。作業効率は通常の2分の1くらいに落ちる。

・眼精疲労で視界がちらつく。あまつさえなんかものもらいの気配がする。異物感。

・徹夜明けの日はもちろん、その翌日も全く役立たずになる。さらに言えばその翌々日(つまり今日)も怪しい。

・さらにトリコチロマニアがひどくなって、10センチ以上の長さを獲得していた私の毛が数十本犠牲になった。床屋がどんどん遠くなる。

・(追記)体が冷える。忘れていたが、今回もっとも難儀したのはこれだった。お茶を飲んでも飯を食っても体が温まらない。わんわんと走り回ってもすぐに冷えて再び温まらない。台所の水が冷たい。よう知らんけど、アドレナリンが放出されて血管が収縮されているせいなのだろうか?

 

今回は、徹夜明け後あまり十分に睡眠もとっていない。というのは読書が楽しかったからなのだが、昨日夜の4時近くまでかかって中山七里「さよならドビュッシー」を読み終わった。ツッコミどころは多いものの、総じて楽しめる内容であった。

 

このところほぼ休みなく働いていてしんどいのだが、今だけと思って頑張る。私の仕事は11月から3月にかけてが繁忙期で、その期間で年収の6割近くを稼ぐ。3月中旬から緩やかに仕事が減り始め、7,8月頃は月に10日も働いたかしら、というくらいになる。今のところ順調に仕事が来ているので懐が温かい。温かい懐を抱えたまま暖かい季節に突入したいので、いまのうちに稼いでおくのだ。それで閑散期に入ったらどんどん本を読むのだ。

労働に価値を見出すのが好きな人は多いが、やはり人間って仕事してない方が自然であるし幸せである気がするのだよな。そういう春を夢見て働いている今日この頃である。

 

追記:1時くらいにわんわんをトイレに連れて行ったら、外は月でぺかぺかに明るく晴れていて、遠くの山まで見晴るかせた。雪を被った山があっち側でしーんと佇んでいるところは別世界みたいに感じる。ここはメルヘンな世界か何かか。いつもはゲレンデの灯りがここからも見えるスキー山なのだが、今日は灯りが完全に落ちていた。代わりにオリオン座が山に落ちていくところだった。

あと、気温がぐっと下がって、我が家の狭い庭でかんじきが成立した。わんわんと二人いつもなかなか行けないところを歩き回ることしばし。楽しい。雪を踏んでも沈まないと言うのはスペシャルな体験である。本当にかんじき買おうかしら。